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『酒を片手に庭に出る-日野裕太郎短編集』(日野裕太郎)

【掌編短編集】無料販売中
少し不思議な怪異譚、幼児ハードボイルドや、多感な女子高生の日常を描いたドラマなど6作品収録。どれも5分程度で読める短編ですので、空き時間、通勤通学のお供にいかがでしょう。

『酒を片手に庭に出る』
すこし不思議。庭の大樹の爺さんと/ホラー掌編

『衝撃はショウを動かす』
迷子はどっちだ/幼児ハードボイルド掌編

『声』
耳を覆う恐怖と狂気/ホラー掌編

『トト』
多忙で自分を見失いそうな時、ほっと休めるトトの店/現代ドラマ短編

『金木犀ローカライズ』
多感な女子高生の日常/現代ドラマ短編

『囚われのきみと踊ろう』
成長の儀式のための旅に出る/ファンタジー短編

新居は広いが、古くてぼろくて、強風で倒壊しても不思議のない物件だった――ただし、家賃はやすい。
庭までついていて、不動産屋がいうに、庭の木が秋になるとひどい落葉だという。そのため家賃がつけられない、と。住宅地と山との境界にたち、たぬきが出るともいっていた。
それらのどこがマイナス要素なのかわからず、だが不動産屋がそれでもいいですか、というのに便乗した。そのくらい我慢しましょう、と生家に蛇もいたちもたぬきも出た私は、しかつめらしい顔でうなずいた。
しかし引っ越した晩に、庭の大樹が話しかけてきたときには驚いた。これが家賃の安い原因か、と庭先で即座に悟った。
悟りながらも、我が耳を疑い、ついでに正気も疑う。
住むなら酒ぐらい供えろ、と厳かな声で大樹は告げた。
残念ながら新しい我が家には、とっておきの――値段でいうなら万札が二枚飛ぶ、上等の日本酒しかなかった。
したがって、私は声を無視することにした。
段ボールに囲まれ、私はひとまず転居を祝う。コンビニの袋を逆さにした。たぬきが出るというので、なんとなく酒の肴と一緒に買った、缶のドッグフードが転がり出た。
するめだのビーフジャーキーだのをかじっていると、家屋がかしぐ勢いで大きく揺れる。大樹の声が轟く。揺れにあわせて、手にしたコップの酒が波をつくる。
手が濡れて、私は頭に血が上った。
「ちょっと、もったいでしょなんてことしてくれんのよ!」
天井に向かって怒鳴ると、揺れがぴたりとおさまった。話が通じるようだ――下手に出てはならない。

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『酒を片手に庭に出る』
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『衝撃はショウを動かす』
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『トト』
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それぞれ話の中で、独自の世界を編み出す作者の技が見どころである。いろいろな話が読みたいが時間がない、そういう方に特におすすめの一冊。

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「下町飲酒会駄文支部」というサークルで、コミケ、コミティア、文学フリマなどに参加しています。

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» 日野裕太郎作品レビュー

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